実験 1: ニトロ化反応―p-ニトロアニリンの合成

アセトアニリドを原料とする芳香族求電子置換反応によって、p-ニトロアニリンを合成します。この実験種目では、高校でも学ぶ基本的かつ重要な有機化学反応のひとつであるニトロ化反応を実際に行い、ベンゼン環の置換基がニトロ化の起こる位置と反応のしやすさにどのような影響を与えるかを確認します。さらに、物質の精製と同定という有機合成実験に必要な基本操作と原理を学びます。

Point 1アセトアニリドのニトロ化

濃硫酸中でアセトアニリドに濃硝酸を作用させて、まずp-ニトロアセトアニリドを合成します。反応液は氷水浴でよく冷やしながら、濃硝酸を1滴ずつ、ガラス棒でよくかき混ぜながらゆっくり加えましょう。二人で分担しながら進めて下さい。濃硝酸の滴下は、一度に2滴以上加えないように注意しましょう。

Point 1p-ニトロアセトアニリドの加水分解

得られた粗製p-ニトロアセトアニリドをなす型フラスコに入れ、6 M塩酸を加えて写真のような還流装置で反応させます。充分に熱が伝わるよう、フラスコの下部が砂浴に深く埋まるように高さを調節し、p-ニトロアセトアニリドの固体がすべて溶解するまで還流を続けることが重要です。

Point 3ガラス細工の体験:毛管作り

薄層クロマトグラフィーで使用するガラス毛管を作成します。ガラス管を回しながらガスバーナーによって加熱し、柔らかくなったら炎から出して左右に引っ張り伸ばします。炎の調節と加熱する位置、さらにガラス管を引っ張るタイミングが良質なガラス毛管を作るポイントです。火傷には充分注意しましょう。

Point 4再結晶によるp-ニトロアニリンの精製

再結晶は、固体混合物を適切な溶媒に一度溶かし、目的物を優先的に結晶化させて純度を高める精製法です。この実験では、p-ニトロアニリンと副生成物の固体混合物を水に加熱溶解させ、溶液を室温まで冷却して純度の高いp-ニトロアニリンを析出させます。粗生成物の収量と目的物の水に対する溶解度をもとに算出した適切な量の水を用いることが重要です。

Point 5薄層クロマトグラフィーによる目的物の同定

合成物が目的物かどうかの確認(同定)を、薄層クロマトグラフィー法で行います。シリカゲルが塗布されたクロマトシートの下端に、作製したガラス毛管で試料溶液をできるだけ小さくスポットし、ジクロロメタン溶媒で展開していきます。各成分に分離したスポットの移動率を求め、市販のp-ニトロアニリンと比較して同定します。