実験 3: 金属錯体の合成―溶媒や温度によって色が変化するニッケル錯体の合成

遷移金属イオンに複数の分子やイオンが配位結合してできた化合物は、一般に遷移金属錯体とよばれ、構成される金属イオンや配位子、あるいは配位構造に依存して多彩な色を示します。この実験では、その一例としてニッケル錯体を合成し、その錯体溶液の色が、溶媒の種類・溶液の温度によって変化する様子を観察します。そして、その色変化が、錯体の構造の違い、および異なる構造の錯体間の平衡移動に起因していることを理解します。

Point 1緑青色および赤橙色ニッケル錯体の合成

硝酸ニッケル六水和物、テトラメチルエチレンジアミン(tmen)、アセチルアセトン(Hacac)を用いてニッケル錯体を合成します。この実験では、まず緑青色の[Ni(acac)(NO3)(tmen)]を合成し、それを原料として目的物の赤橙色錯体[Ni(acac)(tmen)]B(C6H5)4を得ます。合成過程における反応溶液の色変化にも注目してください。

Point 1ひだ付き沪紙を用いた溶液の自然沪過

自然沪過の一種ですが、有機溶媒中に生じた沈殿等を沪過するときはひだ付き沪紙を用いると迅速に沪過できます。この実験では、ひだ付き沪紙が全部で3つ必要になります。反応溶液を撹拌している待ち時間に、教科書記載の折り方を参考にして上手に作っておきましょう。先端となる部分を破ってしまわないように注意すること。

Point 3ロータリーエバポレーターによる溶媒の留去

ロータリーエバポレーターは、錯体溶液のフラスコ内部を減圧し、回転させることで溶媒を迅速に留去できる装置です。フラスコ内壁に広がった液膜全体から蒸発するため、溶液を効率よく濃縮できます。本体の他に、湯浴・ダイアフラムポンプ・冷却装置などで構成されています。減圧開閉コックを適切に操作しましょう。

Point 4ニッケル錯体のソルバトクロミズムの観察

合成した赤橙色固体を各試験管にミクロスパーテルで約3杯とり、指定の溶媒を2 mL加えて溶液を作ります。溶媒の種類による色変化(ソルバトクロミズム)を観察・記録しましょう。アセトン溶液は2本調製し、加熱・冷却による色変化(サーモクロミズム)も調べます。溶媒の分子と溶液の色にどのような関係があるでしょうか。